森のほとりであいましょう。2024年9月号

もう、大人だから大丈夫。

もう大人になったからやりたくないことはやらなくていいんだ、と安心することがある。

合唱が上手くいくまで何回も歌ったり、消極的なところを直せと通知表に書かれたり、子供の頃はモヤモヤすることが多かった。

歌が嫌いなわけじゃない。音楽の合唱は授業時間をオーバーしてでも上手くいくまでやるのに、理科の実験は成功しないグループがいてもチャイムと共に終了するようなところが気に入らないのだ(私は理科が好きだった)。

消極的なのはやる気がないわけじゃない。他の子の主張が強い時に、それを押しのけてまで意見を通したい気持ちがなかった。そして家では元気な長女の役回りだったから通知表に書いて欲しくなかった。親に知られたくなかった。

こんな感じだったので学校は私にとって混乱の場だった。健康な子供だったし、いじめられてもいない。状況としては何も問題は無いのだけど、いつも何かが解せない。おとなしい子供だと思われていたように思うが、疑問でいっぱいの毎日のせいで頭の中はいつもうるさかった。

それらの問題は何も解決していない。だけど私は大人になった。もうモヤモヤすることから逃げても誰にも怒られない立場を手に入れた。

実際はモヤモヤすることから逃げたりしない。だけど「自分の判断でやらなくてもいい」という状態に心が救われる。そして納得できないことにならないように、先回りも、迂回もできる。

今でも眠る直前に「あぁ、もう大人だから合唱しなくていいんだ」とホッとする。(子供の頃はモヤモヤで寝付きが悪かった。)守られている。誰でもなく大人の自分に、自分は守られている。

私の子供時代は客観的に見て悪くなかったと思う。理不尽なことも、誰かからの悪意も、乗り越えられないような辛いことも、なかった。ただ私の心が幼くて、だけど無駄に敏感で、うまく適応できなかったのだ。子供の私に伝えてあげたい。「ちゃんと生きてればいつか大人になって、安心して眠れるようになるよ」と。「その日までズルしないで頑張れよ」と。

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